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 窓の外に目をやると、昨日より一段と空が遠い。中庭の銀杏がほんのりと黄金色に色づき始めている。すっかり秋の気配を感じさせていた。夕方になれば涼しさを通り越して、少し肌寒さを感じる。昼間は、あんなに暑くだるいのに…。この気温差がちょっと身体に堪える。

 今朝、無理やり母さんに渡されたカーディガンが役に立とうとは、思ってもみなかった。「荷物になるからいらねー」って拒否した事を申し訳なく思い、心のながで反省の念を送った。俺は、スルリとアンゴラ混のカーディガンを羽織った。

 教室にはまだ数名が残っている。6限目の生物のプリントを今日中に提出しなければならないからだ。前回行った実験の結果が黒板にびっしりとまとめられている。俺のグループは比較的まともな実験データを得ることが出来たので、考察をまとめる程度で済んだ。
 
「鳴海。シャーペン貸して…。俺らのトコ実験失敗したから、コレ写さないと…」

 背後からため息交じりの不満げな声がして、克哉は俺の前の席についてこちらを見ている。
 
「ん」

 目線は克哉を避け、そのまま手にしていたシャーペンを克哉に差し出した。

「サンキュ!」

 あっ……。
 右手の人差し指の先に、克哉の指がほんのちょっと触れた。驚いてその反動で思わず顔を上げてしまった。一瞬にして体中の血液が頭へと昇ってくるのが分かる。頬杖をついている左手に加速する脈音が痛いほどに打ち付けているのを感じていた。
 
 克哉は俺からシャーペンを受け取るとプリントをヒラヒラさせながら、黒板がよく見えるところに移動した。
 バレていない―――
 たかだか指が軽く触れた位の事でいちいち動揺している自分に驚いた。しかも、それが気づかれなかったことにホッとするなんて、どうかしている。

 俺は、窓の下に見える中庭を眺めているフリをしていた。
 そう…。フリだ。目線は外を向きながらも、克哉の姿を右目端に捉えて盗み見ている。必死に黒板とプリントを視線が行き来する。その横顔が真剣過ぎて笑える。
 時折シャーペンを下唇に押し当てて、考え込んだりする仕草をする。その度にギュッとつままれたような感覚が全身を襲ってくる。そして、さっき軽く触れた指先がジンジン疼く。

 右手の人差し指が熱い―――そっと唇で触れてみる……

 はっ……。何やってんだ俺。我に返ると今のしぐさが誰かに見られていたような気がして急に恥ずかしくなった。克哉相手に何考えているんだ…。
 俺は居た堪れず席を立った。

 西日の光線を受けた放課後の長い廊下は寂寥感が漂う。この感じは俺の身体のどこかに存在する。うっかりすると足元をすくわれそうになるから、気を付けなければと警戒心が強くなる。
 なんか飲み物買ってこよう…。喉の奥に何かが詰まったようで気分が悪い。

「 っつ―――!」
 教室を通り過ぎようとした瞬間グイッと腕をつかまれた。
 
 
「鳴海。オレ、いつものね」

「はぁ?」

「自販機いくんでしょ?」

「なんでわかる」

 克哉は笑っているのか?逆光で表情が読み取れない。
 つかまれた腕を振りはらい、中庭の自販機へ向かった。
 
 中庭の隅に無機質な自販機が3台ならんでいる。
 克哉がいつも買っている銘柄のストレートティー。ボタンを押そうとしたとき
 ほんの一瞬邪推が横ぎった。
 なんかむかつく。俺あいつのパシリか?
 思わす隣のアップルティーを押した。

 教室に戻ると、克哉は俺の机に腰かけて外を見ていた。

「ん」

「サンキュ」

 汗をかいた缶を克哉が受けとった。

 あ。まただ…。
 俺は動揺を気づかれないよう、プルタブを開けて一気に中身を飲み干した。

 克哉も一口含んだ後、こちらをじっと見ている。

「あれ?鳴海めずらしいね。アップルティー買ったの?」

「うん」

「一口飲ませて」

 俺から缶を受けとり飲んだ。
 ゴクリと飲み込む音が、耳につく。気恥ずかしくて克哉を見ることはできない。

「あー。俺やっぱストレートのほうがいいや。コレ甘すぎ」

 じゃぁ。人のモン飲むなよっ。
 返ってきたアップルティーをじっと眺めた。
 飲まないと変だよな…。って、俺何考えてんだ。克哉は男だろ。
 
「鳴海?帰ろっか」

 鞄を肩にかけ教室を出る克哉の後に続く。
 グランドから運動部の掛け声が廊下に響いている。
 ふと目線を上げると、克哉の髪が西日に反射して茶色く透けて輝いて見えた。
 急に心臓の鼓動が早くなる。

 痛ってえ――。思わず胸をつかんだ。

「どうしたの?」

 克哉が振りかえり覗き込んだ。
 近すぎ…。

「わりぃ。なんか胸焼け」

「普段のまないヤツ飲むからだよ」

 こっちの気も知らないで、何言ってんだ。
 お前のせいだろっ。心の中で愚痴る。

「俺のせい?」

「え?」

「鳴海、けっこう分かりやすいから」

「な…なにいって…」

 いつもの交差点まで来ると克哉は「じゃ。明日な」と軽く手を上げて信号を渡って行った。
 人ごみに紛れていく克哉の背中をじっと見つめていた。

 もう一度……もう一度だけ振り向け…。

 そう思った瞬間……。克哉が立ち止まって振り返った。

 ドックン―――!

 ものすごい大きな音を立てて心臓が跳ねる。
 克哉は俺の視線には気が付かずまた歩き始めた。

 痛ッてぇ……。何だコレ……。言いようのない寂しさが心を襲う。

 鼻の奥がツーンと痛み涙がこぼれそうになった。

 やべぇ……俺。あいつが好きだ……。

 俺は涙が零れ落ちないように上を向くと、満月でもないのに丸く膨らんだ月がコッチを見ていた。


 
*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚゚

これが本当は当初、第一話のつもりで書いていました。

書き進めていくうちに
なんとなくこのエピソードは二人の事を知ったうえて
読んでもらいたいなって思って番外編の形をとりました。

鳴海と克哉の二人も可愛いのですが、いがいにもモブ
のつもりだった山川くんのキャラが気に入ってしまって
彼のお話がちょこっとあります。

これはもう少ししてからUPしますので
またその時はお付き合いください。



今日も最後まで読んでくれてありがとうございました♡


紗実の『俺的希求日記』なかなか
新着記事に追いつけないのですが
ひっそりとUPされてます。
よろしければ、カテゴリーの方から
そちらも覗いていただけると嬉しいです(´∀`*)ノ






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 演奏が始まる前の会場は、独特な雰囲気がある。演奏者以外にもいろんな人たちが入り乱れていて忙しない。音響や照明の打ち合わせ、マイクテストを繰り返しこれから始まろうとする音の世界は、だたそれだけで俺の体を興奮へと高ぶらせた。

「やっべー。緊張してきた…。結構クルな…これ」 

 山川の音がいつもより走っている…。こいつでも緊張するのか…そう思ったら、急に可笑しくなって何かがパチンと弾け、頭の中がものすごくクリアになった。言いようのない焦燥に追いつめられるのも、次第に快感へと変わってくる。その瞬間がたまらなく好きだと感じる。

「おいおい…雰囲気にのまれんなよっ…いつも通りにいこーぜ」

 佐伯の一言で、メンバーの音が落ち着きを取り戻す。やっぱりこいつリーダーで正解。そんなことを考える余裕が出てくるくらいこの場の空気感は最高に気持ちがよかった。

「今日はよろしくね。自分たちの好きにやっていいから。あと十分位で開場だから」

「いえ…。こっちこそ、ありがとうございます」

 山川の先輩と軽くあいさつを交わした。リハを終えると開場のブザー音が鳴り響いた。
 本番までの数分舞台のそでで、客が会場内に入ってくる様子を眺めていた。スッと俺の横に山川が並び、ポツリと言った。

「今日……。あいつ来るの?」

「………たぶん」

「そか……。じゃっ、いこーか」


 ステージに上がると今日のイベントの事を聞いていた学校の奴らが結構来ていた。大きな歓声の渦に一瞬足元をすくわれそうになるが、ドラムのカウントが条件反射にとなって正常のスイッチを入れる。定番のアップテンポの二曲は山川のMCを挟み、これ以上のない盛り上がりを見せた。

「えー最後の曲は、今回が初披露になります。作詞作曲はリードGの野島鳴海。いきなりだけど、今日はサプライズで、ヴォーカル交代!!」

 山川の煽りに一気に会場のボルテージが上がり、歓声が地響きのように腹の底から伝わってきた。打ち合わせではこんなこと一切聞かされておらず慌てて山川に駆け寄った。

「ちょっ……ちょっと聞いてねーよ。いつ決めたよっ」

「さっき。お前がトイレ行ってる時にみんなで決めた」

「ま…まじ?無理だって…」

 佐伯が「マイク!声入ってる!」と制止に入る。会場からは笑い声と拍手が沸き起こり「がんばれ!」と激が飛んでくる。山川はマイクを遠ざけて観客を見つめながら耳打ちした。

「お前の曲だろ。今日お前が歌わないとこの曲の意味ねーんだよ」

 

 山川がセンターから外れると、佐伯にアイコンタクトを送るとキーボードの入りからコーラスが重なる、8ビートの心地よいリズムがベースの上を軽やかに刻む。
 強引過ぎる山川の計らいに腹をくくってセンターへ出る。何十回…いやもっと何百回と自分の中で歌い続けてきた歌。マイクを通して歌うのは初めてなのに、不思議なぐらいに曲に声が溶け込んでいく。胸の奥から泉のように湧き上がる感情が、会場いっぱいに言葉が音の欠片となって降り注いでいるのが見えた。
 会場は薄暗くてこちらから顔なんて見えない。それなのに、一番奥の壁際に持たれて腕を組むたった一人の人物が誰なのかはっきりとわかる。

 こんな状況でも見つけられるんだ…。俺…相当重症―――。


*****



「お疲れ様でした」

 外にでるとさっきの熱気を一瞬で吹き飛ばすぐらいシンと冷えていた。ブルッと身震いがして、ジャケットの襟元を耳のそばまで伸ばした。階段を上りきった先には、ガードレールにもたれるように克哉が立っていた。

「今日はおつかれ。打ち上げは明日だから…じゃぁな」

 山川がポンと軽く俺の肩を叩き、克哉に手を上げ合図を送ると、みんなあっさり帰って行ってしまった。なんとなく取り残された感じになってしまった。

「おつかれ。鳴海のマイク越しの声…初めて聴いたよ」

 克哉から吐き出される白い息を見つめる。蒸気は一瞬で外気に冷やされて口元をしっとりと濡れて、鼻先をほんのり赤くした表情がいつもより大人に見えて、俺の心臓が高鳴った。外はこんなにも寒いのに顔が熱くて「お…おう…」と相槌を打つのが精一杯だった。

「帰ろっか……。鳴海ん家行っていい?」

「うんって言わなくったって、来るんだろ」

「あはは…。そうだね」

 お互いの喋る息が白く目の前を濁らす。ほんの一瞬これまでの二人に戻り、憎まれ口をたたくのも久しぶりな気がして懐かしささえ感じた。





 家は誰もおらず真っ暗で、二階へ続く階段を外套の灯だけがぼんやりと浮かび上がっていた。自室に入るとやっと現実に感覚が引き戻されてホッとため息が零れる。同時に克哉もベットに腰を下ろして一息ついた。途端に、二人の間に緊張が走り出した。
 俺は平静を装ってクローゼットに向かい部屋着に着替えるが、明らかに背中が克哉を意識しているのが分かる。

「鳴海…。こないだ、聞いてほしいことがあるって言ってたよね」

「う…うん」

 背後から投げかけられた言葉にドキリとし身体が強張り、返答が上ずった声になってしまった。ヘンに意識しているのバレバレだろう…。

「聞いてもいい?」

「うん」

 そうだ…。ちゃんと言おう…。もう逃げたりはしない。俺は大きく深呼吸をした。

「あの中二の時の事……」

 どこまで克哉がわかってくれるかわからい。最悪な場合、俺の事を拒絶するだろう。それでも、克哉の誤解を解いておきたいと思った。
 部屋の真ん中にある小さなテーブルを端によけ、空いたスペースに克哉と向かい合うようにして床に腰を下ろした。そして、俺は思い出したくもないあの時の出来事を話し始めた。





 あれは、中二の夏休みに入る直前の事だった――――



『なーるー。キスしたことあるん?』

 克哉が突然何の前触れもなく聞いてきた。かなり俺は動揺した。そんなキスどころか恋のこの字も知らない俺には愚問だった。克哉から当時、校内で一番かわいいといわれていた三年の先輩から告白され、初めてキスをしたという報告だった。
 俺は軽くショックを受けた。同じ目線で歩いていたやつが急に大人になってしまっておいて行かれた気がした。俺のそんな気持ちはよそに、克哉はいつもと変わらず家に入り浸っていた。
 衝撃的な報告を受けて数日が立ったころ、克哉がいつものように俺のベッドを占領して昼寝をしていた。忌々しくその寝顔を見ていたら、言いようのない感情が込みあげてきた。
 思えばその感情こそが今ここにある想いの発端だったのかもしれない。
気が付くと俺は、克哉の唇に自分のソレを重ねていた。あまりにも唐突な自分の行動に何故そんなことをしたのか理由が見つけられず、罪悪感が心を締め付けていた。

 だが、事の次第はこれだけにとどまらなかった。その時大学生だった兄貴の彼女が家に遊びに来ていて、現場を見られていた。誰にも言わないからと半ば脅迫され、無理やり体の関係を強要された。屈辱的な行為なのに俺の気持ちとは全く関係なくその行為にのめりこんでしまった。




「…最悪だよな…俺…。自分の事棚に上げて、克哉にひどいこと言った」

 最悪だ…。やっぱりこれ以上、俺の気持ちなんて言ってはいけない。克哉を直視できず、うつむくしかできなかった。
 克哉が深くため息を一つついた。
 そうだよ…。呆れるよな…。一層の事罵って拒絶してほしい。ベッドに腰掛けて話をじっと聞いていた克哉が、俺の目の前に腰を下ろし手を取った。

「鳴海…。俺は……たけ兄の彼女を憎んだよ…。どうしようもなくて…女の子たちを利用したんだ。きれいごと並べて…。だからこの間、鳴海に本心を言い当てられて…。カッとなって俺も鳴海を傷つけた。まさか…そんなことがあったなんて、俺全然知らなくって…ひどい言い方した……」

 握られた手に克哉の熱い滴がポタッポタッと落ちてきた。

「なっ……なに…言って…んの……」

 克哉の言っている意味が理解できない。予想をしていなかった反応に頭の中がついていけない。克哉は、うつむいている俺の視線を拾うように覗き込みまっすぐ見つめてきた。

「鳴海……。俺はね…この気持ちはずっと不毛だと思っていたんだ。
だから、ずっとそばに居られるだけでいいって思っていた…。でもホントは…」

 待て―――。克哉。

 俺はつかまれている手に思いっきり力を入れ、握り返した。


「鳴海…?」

「言うな…。言うなって…」

 やっぱり、おかしいって……。理解の範疇を超えて溢れてしまった想いが首を横に振らす。

「鳴海?どうして……?俺…鳴海のこと好きだよ」

「なんっ…で、そんな…簡単に言うなよ」

 まともに面と向かうことができずに克哉の腕を振り払い身を背けた。情けない位に声が震える。克哉の言葉が嬉しいと身体が勝手に反応し始めてしまってあっちこっちが熱い。

「簡単じゃないよっ…。今まで、何年かかってると思ってるの?……何が怖いの?男同士だから?」

 克哉が声を荒げにし俺の腕を掴み返した。克哉の熱がジワリと直に伝わって鼓動が一気に加速し始める。

「そうだよ…。おかしいだろっ……」

 興奮気味に震える俺をそっと宥めるように克哉の指が髪に絡むと額を肩にのせた。

「おかしくていいよ…。鳴海と一緒に居られるなら……。周りにどう思われようが構わない。俺は鳴海が好きだよ。昨日の歌は俺のためだよね?自惚れじゃないよね?だから、言って…。鳴海の気持ちが知りたい」

 まっすぐな克哉の視気持ちがうれしいと思うのに、胸が苦しい。ずっとずっと、想い続けてきた…。何度も、何度も心の中で想ってきた。それが今報われようとしている…?

「お…俺のほうが…ずっと…ずっとお前と一緒に居たかったんだ…。彼女ができるたびに嫉妬した…。一人で帰るときも…。いつ部屋にお前が来るか…バカみたいに……待って…」

「ごめ…ん…」

 俺の肩に鳴海の柔らかい唇がそっと触れる。ゾクリと身体の芯が粟立ってひた隠してきた想いの糸がプツリと切れた。

「ホントに俺…可笑しいぐらいに……お前が好き……。どうしようもねぇーぐらい…好きだよ…
 どうすればいいんだよ。責任とれよ」

 溢れ出す言葉が止まらない。想いを告げたからと言ってこの先の俺たちがどうなっていくのかなんて全く想像もつかない。ただ、もう誤魔化してはいたくない。今思うすべての事を吐き出すと、克哉は力いっぱい頭から抱え込むように抱きしめてきた。

「うん…とるよ……責任取るから…。俺たち……ずっと恋し合っていたんだね」

「はっ…はずかしいヤツ……よく言えるな」

「鳴海とだったら…何だってできるよ」

「なんだって…って……なにすんだよ」


 克哉は身体を離し、額を合わせ微かに瞳は潤み色香がほんのりと漂っている。こんな表情の克哉は初めて見た。

「何するって決まってんじゃん。これからは…愛し合うんだよ…ねっ?」

 克哉のはずかしい甘い言葉に毒されたのか、身体の中が疼き始める。克哉が見つめ返す瞳には、俺が今一番求めているものがはっきりと映し出されている。お互いを包む腕により一層力を込めて抱き寄せた。
 
 そして俺たちはこれまでの想いをすり合わせそっと唇を重ねた。






*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚゚


短いお話でしたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。

この話はちょうど1年前に完結した話です。
展開がいきなり飛んだりして、省略された部分のエピソードを
付け加えたくなる衝動に駆られました。
手をつけると筋まで変わってしまいそうだったので
なるべくその時のままにしておきました。

こちらは単発的にスピンオフが今後出てきますので
その時は彼らの成長を楽しんでいただけたらと思います。



今日も最後まで読んでくれてありがとうございました
月曜日は、この作品の本当は一話目になるはずだったお話です。
それではまた、月曜日に…。




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  カーテンの隙間から漏れてくる外気が顔をかすめ、冷たさで目が覚める。結露した窓からは外の様子がうかがえないが、その明るさから夜が明けたことは確認できた。

 人は肉体が精神を超えると痛みを感じなくなるという話を聞いたことがあるけど、この事なんだろうか。まさか身をもって体験できるとは思わなかった。昨日の夜は苦しくて、痛くて、どうしようもなかった身体がすっきりと軽くなっている。
 昨日のことは実は夢だったんじゃないか……。と思ったが鏡の中の俺の姿がちゃんと現実を突き付けてくれた。

 ひでぇーなぁ……コレ……。
 対面する姿は、目のまわりが真っ赤になって浮腫んでいる。軽く指でなそってみたらヒリヒリと痛んだ。眺めていても仕方ないので素早く身支度を始めた。


 玄関を出ると、完全武装しているにもかかわらず寒い。マフラーで口元を覆っているが、隙間から漏れる息が白く目の前を覆う。むき出しとなっている顔と耳に外気の冷たさが容赦なく突き刺してくる。
 そんな痛みも苦痛というよりむしろ快感に近い。気が滅入って崩れそうになってしまう俺の身体を押しピンがしっかりと固定してくれているようだった。

 教室に入ると、さすが期末試験とあっていつもと雰囲気が違う。互いに問題を出し合ったり、一人自分のまとめたノートを確認したりとそれぞれが試験に備えている。
 そんななか、一つの人だかりにがある。中心は克哉だった。
 英語の試験があるときは、もう恒例の光景だ。俺は自分の席に着くと窓の外を見るふりをしながら、意識は克哉を捕らえていた。

「よう」

 山川が軽く手を上げ自分の席に鞄を置くと俺の前の席に腰を下ろした。

「相変わらず、井上…モテるな~」
「そうだね」

 口を開くのが億劫で、視線の先を変えず窓の外を意味なく見つめる。俺の視線を拾うように山川が覗き込んできた。

「…お前。もしかして、一夜漬け? 目の周りひでーぞ……。あっ」

 山川は何かを感じ取ったらしく、自分の口に手を当て目を一回り大きくさせた。思いのほか山川の声は教室中に響いた。今の克哉に聞こえたんじゃないか? と思ったが、人の事を気にしている余裕なんてまわりの連中にはない。

「はっ…。俺、今回ちょっとヤバイからな…。オールはきついね」

 何とか苦し紛れのいいわけでごまかしてみたが……かなり厳しい。軽くなったと思った身体が急に重みを増してきた。
 山川は「あんま、無理すんな」と軽く肩を叩いて席に戻った。



     *



 試験も終わり、あとはライブまで練習に打ち込める自由の身となった。相変わらずあの日以来、克哉とは口をきいていない。
 俺の身体はぽっかりと穴が開いて、大切なものを落っことしてしまったようだった。こんな状態でも、日常は容赦なく落ち込む隙を与えない。気持ちと身体がバラバラであっても、まだやらなければならないことがあるだけマシって思えた。


 放課後練習に向かう。廊下から見下ろせるグランドからは運動部の掛け声が響いて本来の活気を取り戻していた。部室には山川だけしかいなかった。


「ほかの奴らは?」
「ん。楽器屋に行くって言ってたから今日は、個人練習。っつても、俺らしかいねーけどな」

 山川はギターを磨いている。練習がないのなら帰ろうか。と思ったけどそれは山川に悪いような気がして、無造作に寄せてある机に腰を掛けた。

 グランドから響いてくる声はお互いの沈黙をさらに助長させた。何か言わなきゃいけないだろうと余計な緊張が続く。フッと聴き込んだメロディーの鼻歌が流れてくる。ライブで演奏する予定になっている俺の作った曲だ。傾きかけた太陽の光が部室内に入り込んで、俺たちの顔をオレンジに染めた。


「なぁ。井上と何かあった?」

 沈黙の均衡をぶったのは山川だった。

「べつに……」

 いろいろと気づかれている山川に、こんな態度は今さら無意味なことは分かっているが、俺の張りつめた精一杯のプライドが虚勢を張った。

「べつにじゃないだろ? あいつ女と別れたんじゃねーの? なのにお前のとこ来ねーじゃん」

「また、新しい子ができたんだろ。つーかさぁ…俺らいつも一緒ってわけじゃねーし…」

 山川はちょっと大袈裟に笑い出した。磨いていたギターをスタンドにかけ、こっちを見据えてた。

「なっ…何がそんなにおかしいんだよっ」

「のじま~。おまえさぁ、ホントに自覚ねーの? それとも気づかれてないと思ってんの? まぁぁ…俺もだけどさぁ、メンバーの奴らもみんな心配してるわけよ。お前、ここんところずっと泣きそうだったから」
ジリジリと山川が近づいてくる、逃げ出すことは許されないと追いつめられていった。そして、決定的なひと言を言い放った。

「ほら…あの曲だって…。あれだろ? あいつのことじゃねーの」

 ちょっ…ちょっと待て。全身の毛穴からドッと汗が噴き出して、脈拍がどんどん加速していく。
 バレてる??

「メンバーが気づいてるって…。はぁ? 心配って何だよっ!」

 山川はそっと俺の両肩に手をのせ落ち着かせるような仕草をして、俺の頭をクシャクシャひと掻きした。俺から視線を外しポツリと語り始めた。

「これでもさぁ。俺ら2年近く一緒に同じ事してきてんじゃん。
 お前らすっげー仲いいし、なんとなーく気づいたわけよ。それに、お前自分の恋バナとかしねーし…。言えねーんだろーなって…。佐伯達も最初は『ありえんだろ』なんて言ってたけどね。
 まぁー。お前の歌詞見たときさぁ、べつに普通なんじゃんって、……ただ…ちょっとツレーよなぁ……」
「普通とか、辛いとか…。何だソレ……」

 そんな…簡単に受け入れんなよ。

 認めてしまえば、溢れ出して止まらなくなる。体中が震えだして、腹の底から言いようのないものが這い上がって吐きそうになった。とっさに手で口を覆ったが、隙間から嗚咽が漏れる。目の前の山川がじわじわとぼやけた。

「わ…わりぃー。泣かすつもりじゃ…」

 あわてて俺の肩をつかむ山川に「お前のせいじゃない」と声にならない思いを込めて首を振った。山川の肩に体を預けた俺は、小さい子供をあやすように宥められた。

「俺、べつにお前のこと変とか思ってねーから。マジ人を好きになんのって、あんま理由とかねーし。だからさぁ、前に野島にキスしたのも、泣きそうなおまえがかわいいとか思っちゃったのは、けっこうホントのことなんだよね」

 思わず顔を上げ山川を見た。

「悪かったな…。井上に誤解させて」
「いっいや…誤解も何も…アイツは…俺のことは……そういう対象じゃねーから」

 山川が突然グイッと力を入れて肩を引き寄せた。

「い…痛っ。なに…」
「…っなぁ。ほんとにそう思っての?お前、ちゃんと井上に言えよ!」

 手首を強くつかまれて、振り払うことができない。
克哉に言う?何を?……。あの女の子たちみたいにか?言ったところでどうなるっていうんだ。

 ガタン!!

 ドアを殴りつけつ大きな音がした。とその瞬間、体が弾き飛ばされた。

「痛ってぇ―――!」

 山川が大声で叫んでいる。目の前で大きな影が山川に覆いかぶさった。

 克哉――――!


「ってめーっ。なにしてんだよっ。ふざけるのもいい加減にしろよっ」

 ものすごい形相で克哉が山川に殴り掛かった。俺は背後から克哉を必死に抱え込み引き剥がそうとした。

 「克哉―!克哉!何もしてねぇーよ。山川は何もしてねーって!」

 山川は倒れこんで切れた口元を抑えている。息が上がり肩を揺らす克哉は、咎めるような視線を投げつけていた。

「俺の話を聞いていてくれただけだから…」

 山川は起き上がり鞄を手に取ると、すれ違い際に克哉の胸にこぶしを当てた。

「あんときのこと、これでチャラな」

 そう言うと笑顔を俺に向けて部室を出て行った。

 しばらく俺たちは黙り込んでいた。俺は、何か言わなければと思うのだか、何を言えばいいのかわからなかった。
 克哉は俺に背を向けたまま、まだ握りしめたこぶしに力が入っているのか腕を振るわせている。

「か…かつや…。……ご…めん」

 とにかく、この間の事は謝らなければと思った。だけど、これ以上言葉が見つからない。

『お前、井上にちゃんと言えよ』

 そっか…肝心なこと避けようとするから、言葉がないのか…。中2の時のことも…この想いも…。ちゃんと克哉に言わなきゃいけないのか。俺は、まっすぐ克哉の背中を見つめた。その表情は見えないが、決心が崩れてしまわないようしっかりと見据えた。

「克哉…俺さぁ…。お前に聞いてほしいことがある。今度の金曜日のライブ…来てほしい」
「………」

 返事はない。当たり前か…。今更都合がよすぎるって話だよな。でも、それでも克哉には聴いてほしい。俺が今まで思ってきたこと、このまま終わってほしくはない。克哉の腰に回した腕にギュッと力を加えた。

「克哉……」

 力の入った俺の手に克哉の手がそっと重なり、ゆっくりと手を解き振り返った。克哉の眼に揺れる俺の姿が映り込んでいる。今にも崩れて零れ落ちそうだ。

「…言われなくても、行くつもりだったよ」
「ライブの後……。全部…話すから」
「鳴海を待つのは慣れてるよ。…帰ろう?」

 俺たちは久しぶりに一緒に教室を後にした。




*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚゚


昨日はすみませんでした。

不慣れで読みにくいところもあるかと思いますが
少しずつ改善していきます。


最後まで読んでくれてありがとうございます。
よろしければ、また明日






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